2023年9月5日火曜日

9月は、ジャニーズ問題の報道のでたらめさと戦う




 8月29日、ジャニーズ事務所は公式サイトで再発防止特別チームの調査結果を公表した。
 性加害やパワハラなど、同事務所が子ども虐待を平気で続けてきた事実が明るみになった。

 調査報告書ではメディアの責任の重さも語られたが、9月5日時点までにテレビ局や新聞社の「社員記者」が語った「報道しなかった」反省の弁は、主に以下の通りだ。

●芸能ゴシップと考えて、報道の仕事ではないと判断した
●男子が被害者になることを想定していなかった

 この2点を見ると、いずれも今なお勘違いを続けていると思わざるを得ない。

 被害者が子ども(未成年)であることに、「社員記者」は関心がなかったのだ。

 だから、「芸能界であろうと、子どもが被害に遭うのはおかしい」とは考えなかったし、第2次性徴を迎えていない年齢の子まで被害に遭っているのに「男子」というジェンダーを勝手に思い浮かべていた。

 その結果、事務所との契約を代行する親権者に責任を問うこともしないし、今も所属するジャニーズJr.やその予備軍の子どもたちへの取材もしない。

 それどころか、「報道できなかった本当の理由」をテレビや新聞で語ることさえしない。

 テレビ局や新聞社は、莫大な広告収益によって社員のべらぼうに高い年収を保っている。
 TBSの社員の平均年収は、約1500万円だ。

 それでも、子どもを性虐待から守りたいなら、性加害の事実が最高裁で認められた20年以上前に、経営陣に社員たちが詰め寄って、以下のように言えば、再発防止はできたはず。

「私たちの高い年収を削っていいですから、ジャニーズ事務所との取引を停止してください。子どもを性加害で苦しめ続ける企業と一緒に作る利益で生活したくありません」

 しかし、9月7日の同事務所の記者会見を待たずに、TBSとフジテレビは「今後もジャニーズ所属タレントの出演を続ける」と明言した。

 これは、人気タレントによって保たれる視聴率、その高い視聴率を担保にスポンサー企業をテレビ局につける電通、電通の言い分をうのみにするスポンサー企業の「利益共同体」の意向をテレビ局が追認したからだろう。

 テレビ局+電通+スポンサー企業という3者の社員が、「子どもがどうなろうと、私たちは自分の高い年収を守りたい」と考えている以上、彼らは「子ども虐待企業とは取引しません」と明言することはない。

 ジャニーズ事務所の問題が解決しようとも、この利益共同体がSDGsにある「子ども虐待の撲滅」に取り組まない以上、国連が「ビジネスと人権」をいくら指摘しようが、ジャニーズ問題は違う事務所で起こり続けるだけだ。

 だが、「金儲けのためなら子どもがいくら犠牲になってもかまわない」という居直りに対し、こども家庭庁も動かない。
 これが、残酷な日本社会の姿だ。

 この現実を見据えるところからしか、反省なんて生まれない。